雨夜の情事

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「えっ?」 「今の電話、椎名だろ?」 「うん……」 「俺にはそういうのが足りなかったんだな」  未だに思うことがある。  もっと彼女に自分の気持ちを伝える努力をしていたら、結果は違っていたのだろうか、俺の気持ちは本当に椎名より劣っていたのだろうか、と。 「そ、それより、早く髪乾かさなきゃ熱上がっちゃうよ」    心配している風を装い、くるみは俺の腕をやんわりと解こうとした。  だが、俺は彼女を離さなかった。  軽蔑されることを覚悟で、俺は本当のことを告げた。 「熱なんかないよ」 「でも、ゾクゾクしてるんでしょ?これから上がってくるかも……」  言いながら、くるみは俺の腕を掴んで解こうとしていた。 「嘘だよ」 「嘘?何が?」 「ゾクゾクなんかしてない。そう言ったら、くるみが構ってくれるんじゃないかと思ったんだ」  言った瞬間に、くるみの動きがピタリと止んだ。
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