8252人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっ?」
「今の電話、椎名だろ?」
「うん……」
「俺にはそういうのが足りなかったんだな」
未だに思うことがある。
もっと彼女に自分の気持ちを伝える努力をしていたら、結果は違っていたのだろうか、俺の気持ちは本当に椎名より劣っていたのだろうか、と。
「そ、それより、早く髪乾かさなきゃ熱上がっちゃうよ」
心配している風を装い、くるみは俺の腕をやんわりと解こうとした。
だが、俺は彼女を離さなかった。
軽蔑されることを覚悟で、俺は本当のことを告げた。
「熱なんかないよ」
「でも、ゾクゾクしてるんでしょ?これから上がってくるかも……」
言いながら、くるみは俺の腕を掴んで解こうとしていた。
「嘘だよ」
「嘘?何が?」
「ゾクゾクなんかしてない。そう言ったら、くるみが構ってくれるんじゃないかと思ったんだ」
言った瞬間に、くるみの動きがピタリと止んだ。
最初のコメントを投稿しよう!