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「そ、それは分かってるけど……」
「分かってるって言われるのも、何かあれだな……」
信用しているという意味で言ってくれただけかもしれないが、男としてはそこまで信用されるのもいかがなものか。
”何もしない”というのは、”何もしたくない”という意味ではないのだが、口に出すのは止めた。
「体冷えてるし、せっかく淹れてくれたんだからコーヒーだけでも」
家で淹れたコーヒー如きで礼もないのだが、他に礼のしようがなかった。
恐る恐るマグカップを受け取ると、くるみはソファーに座った。
さすがに隣に座るのは憚られ、床のクッションに腰を下ろすと、見ていたくるみが立ち上がった。
「ごめんなさい、わたしがそっちに座ります」
「いいんだよ、そんなこと気にしなくて」
「で、でも……」
「そんなに気になるなら、隣に座ってくれてもいいけど」
耳まで赤くして首を振ると、くるみは黙ってソファーに戻った。
久々に見る微笑ましい光景に、何だかホッとする。
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