雨夜の情事

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「久しぶりにくるみのグラタンが食べたいなぁ」  お世辞でも媚びている訳でもなく、それは本音だった。  時々、無性に食べたくなる時があるのだが、今日は久々に顔を見たから余計にそう思うのかもしれない。 「……なんてね」  もちろん、叶わぬ願望に過ぎないことは分かっていた。  もう二度と食べられないと思うと、余計に食べたくなるのが人間の情けないところかもしれない。 「……あんなのでよければ、今からでも作るけど」  その気持ちだけでも十分嬉しかったが、冷蔵庫が空だと告げるとくるみは材料を買いに行くと言い出した。  さすがに、じゃあお願いと頼む訳にはいかなかった。 「いいよ。雨宿りしてるのに、買い物に行くのはおかしいから」 「平気だよ。別に雨に濡れたからって死ぬワケじゃないし……」   本気で買い物に行きそうなくるみの手を掴んだ。
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