雨夜の情事

15/29
前へ
/1603ページ
次へ
「そんな顔しないでよ……」  零れ落ちそうな涙に親指を添える。  至近距離で目が合うと逸らせなくなった。  指を添えていた手で頬を包む。  潤んだ目で見つめられ、我慢ができなくなった。  いけないと思いつつ、唇を近付けていく。  拒むことなく、くるみはゆっくりと目を閉じた。  軽く唇が触れると、体に電流が流れたような気がして怖くなった。 「ごめん……」 「謝らないで……」  これ以上そばにいるのは危険に思えて離れようとしたが、くるみに腕を掴まれた。 「もう、わたしのこと好きじゃなくてもいいから……これで最後だから……ちゃんと忘れるから……」  たどたどしくそう言うと、くるみは俺にキスをした。  その瞬間に頭が真っ白になり、何も考えられなくなった。
/1603ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8251人が本棚に入れています
本棚に追加