嘘とジェラシー

雨夜の情事

　彼女がそっと唇を離すと、追いかけるように両手で頬を包んで引き寄せ、じっと目を見つめた。

　ゆっくりと視線を桜色の唇に落とす。顔を傾け唇を近づけていくと、彼女の唇が薄く開いていく。

　その瞬間の彼女は艶めかしいオンナの顔をしていた。

　空白の季節を埋めるように、濃密なキスを交わす。

　唇や舌が絡む淫らな音に、窓を打つ雨音さえかき消されていく。

　吐息も次第に荒々しくなり、動物的な本能が剥き出しになっていく。

　余計な感情は捨て、ただの男と女になって激しく求め合う。

　雪のように降り積もっていた情欲が雪崩のように溶け出して、自分でも制御できないほどに昂っていた。

　この数ヶ月、幾度となくくるみのことを思い浮かべることはあったが、もう二度とくるみの肌に触れることはできないと思っていた。

　半分夢の中にいるようでいて、感触や匂いは目が覚めるほどに生々しい。