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慌てて手を退けると、そこにはイヤリングがひとつ、ぽつんと佇んでいた。
当然、俺の物ではないしくるみの物に間違いはないが、小ぶりのフープのイヤリングは見たことがない物だった。
手の平に乗せ、しばし眺めてみる。
もう既にくるみは俺のいない世界を生きている。
俺の知らない時間を椎名と共に歩き始めている。
君の世界にはもう、俺は必要ないんだな……。
ソファーの背もたれに体を預け、天井に向かって深い溜息を吐いた。
俺といた時よりも彼女が幸せになってくれたら、それでいいんだよな?
釈然としない自分に問う。
……本当にそれでいいのだろうか。
それが俺の本心なのだろうか。
俺が彼女に言いたかったことは「幸せになれ」だったのだろうか。
執拗に自問自答を繰り返したが、答えを出せないまま朝を迎えた。
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