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新人の頃に毎日のように言われていたから、仕事の中では当たり前にそうしてきたが、俺はくるみのために時間をつくる努力をどれだけしていたのだろう。
俺の基準はいつも俺自身で、くるみの立場に立って物事を考えることなどほとんどしなかった。
椎名の言った通りだった。俺はいつの間にか仕事を免罪符にして、自分に都合よくくるみと付き合っていた。
自分から別れを切り出したのも、彼女の幸せのためだとかそれっぽい理由をつけていたが、結局は彼女にフラれるのが怖かったんだと思う。
初めて彼女からサヨウナラと言われてやっと目が覚めた。
少しの間、椎名に寄り道しても、いずれは俺の元へ帰ってくるのではないかと、どこかで期待していたのだと思う。
くるみなら最後にはきっと俺を選んでくれると。
だが、彼女の口から別れの言葉が出た以上、甘えた期待は木っ端微塵に砕け散ったということだ。
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