雨夜の情事

26/29
前へ
/1603ページ
次へ
 なぜお前が仕切る?という疑問は面倒臭そうなので呑み込み、口実で持ってきたイヤリングを差し出した。  コイツは俺とくるみのコトを知っているのだろうか? 「ありがとう……ございます」  恐る恐るイヤリングを受け取るくるみは、俺と目も合わせず俯き加減でずっとTシャツの裾を引っ張っていた。  その姿があまりに気の毒で、俺はすぐにでも帰る気でいた。  だが、椎名は俺に突っかかってきた。  わざわざイヤリングを届けに来たのが納得できないらしい。  確かに、本来はその目的で来た訳じゃないが、誰かさんが邪魔なのでやむを得ない。 「そんなもんわざわざ部屋まで持って来やんでも、ポストに入れときゃ済むことやろ。それをここまで届けるやなんて、上がり込む気満々やん。どうせ、オレがおらんかったら一発ヤッたろうとか思ってたんやろ。この前みたいに」  どうやら椎名は俺とくるみのことを知っているらしい。核心に触れた瞬間、奴の顔つきが変わった。と同時に、くるみも顔面蒼白になった。
/1603ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8251人が本棚に入れています
本棚に追加