8251人が本棚に入れています
本棚に追加
ドクドクと自分の脈の音が聞こえてきそうなほどの沈黙が流れた。
彼女はしばらく固まったまま、潤んだ目でオレのことをじっと見つめてる。
アイツと同じようにオレのことも誘って、というのはオレにとっては最後の賭けやったけど、彼女がオレを誘うことはないと覚悟はしてた。
どういう状況で、何て言う言葉で、雰囲気で、場所で、どんなつもりで、彼女がアイツを誘ったんかは分からん。
もしかしたら、ホンマにぜんぶ忘れたいと思ったんかもしらん。
けど、だからって今オレを誘いたいかと訊かれたら、答えはノーやと思う。
どう考えても、今はセックスするような空気じゃない。
正直、オレでさえアイツの顔ばっかりチラついて、とても欲情するような気分ではないのに。
『ごめんなさい。できません』『今はそんな気分じゃない』『もう少し時間がほしい』
さっきからずっと彼女がどんな言葉で断るのかを考え、何とかダメージを減らす方法を探してた。
最初のコメントを投稿しよう!