彼女の選択

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「こんな時間に何しに来たん?今、ちょっと取り込み中やねんけど」   いつも澄ました顔して何考えてるかよう分からんけど、オレらの姿を見た瞬間、ヤツは眉毛を片方だけ上げて訝し気な顔をした。  訝しいのは寧ろこっちやけどな。 「そうか。それは悪いことしたな。また出直すよ」  内心ではムカついてるんやろうけど、ヤツは事も無げにそう言った。  さすがに、こんな生々しい姿見せられたら諦めて帰るか、カァッとなって思わず本音が飛び出すかと思ったけど、そう簡単にはいかんらしい。 「いやいや。出直さんでいいから。オレがおらん時にこそこそ会いに来られたら気分悪いし、用があるなら今済まして。オレの前で」  今日は曖昧なまま帰すワケにはいかんと思い、ヤツを玄関の中へと引き入れた。  わざわざ出直すなんて言うから、どんだけ大事な用なんかと思ったら家に落ちてたイヤリングを届けに来ただけって……。
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