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忘れるはずがない。
くるみと別れた日なのだから。
「あんまり意外だったから、あの時いた連中はみんな憶えてるぞ。お前を狙ってた木村商事の女部長もドン引きだったもんなー」
話がひと段落しそうなところでちょうどエレベーターがやって来た。
開いた扉の向こうにくるみがいなくてよかったと思う反面、せっかく来たのだから一目見たいという気持ちもあった。
だが、会わなくてよかったのかもしれない。
ここで顔を合わせたら、嫌でも初めて会った日のことを思い出してしまう。
『あ、あの……名刺……頂けませんか?』
記憶の中にいる少し色褪せたくるみを引っ張り出してきたが、やはり可愛かった。
『し、知ってますよ!毎晩名刺見てたのに……!』
もう一度、浴衣を着たくるみと花火が見たかったなぁ。
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