アイツの本気と俺の本心

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 大事な打ち合わせだというのに、身が入らず心ここにあらずで話を聞いていた。一応、メモは取っているが、後で見て分かるように書けているのかは疑問だ。  先輩が珍しく熱心に聞いていたし、向こうも喋りたくて仕方がない様子で話が止まらず、終わった時には定時を過ぎていた。  くるみはもう帰っているだろうな。  多少、がっかりしながら正面玄関へ向かうと、見慣れた背中が見えて胸が高鳴った。  帰らずにあんなところで何をしているんだろうと思っていると、先輩が大きな声で言った。  「うわ~!雨降ってんじゃん!」  その声に驚いてくるみが振り返った。  くるみは一瞬俺を見たが、すぐに目を逸らしてしまった。  もう、あの頃のように頬を赤らめ、俺をじっと見てくれることはない。
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