アイツの本気と俺の本心

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「俺、タクシー呼びます」  ガラス張りのエントランスの向こうは激しい雨が降っていた。  先輩は傘を持っていないと言うし、鞄にはPCが入っているので雨の中を歩く訳にはいかない。  スマホを片手に少し離れたところでタクシー会社に電話をかけた。  手配を終えて戻ると、先輩とくるみが話しているようで血の気が引いた。 「10分ほどで来るらしいです……え、ちょっと何してんですか?」  少し目を離したらこれだ。ったく、油断も隙もありゃしない。  俺はすぐさま、先輩の腕を掴んでくるみから遠ざけた。 「せっかくだから、一緒に食事でもどうかと思って」 「バカなこと言わないで下さいよ!」  空気が読めない人だということは分かっているが、だからこそ嫌々ながら破局したことを話したのに鈍感にも程がある。 「いいじゃないか、別に。食事するだけなんだし。傘も持ってないみたいだしさ、この雨の中帰すのはかわいそうだろ?ねえ?」  まだ言うのか?一体何を考えてるんだ。
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