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「ったく、人遣いの荒い奴だなぁ。俺がずぶ寝れじゃねえか。一応先輩なんですけど、俺」
「……すみません。ありがとうございました」
口だけの謝罪をしながら、ハンカチで竹中さんの髪や肩の雨を拭った。
「今日は会社帰っても、さっき聞いた話をまとめるぐらいだから、もう上がって彼女を送ってってやればいいのにって、俺なりに気遣ったつもりだったんだぞ」
「気遣わせてすみません」
気持ちはありがたいが、送って行けるものならとっくにそうしている。
あんなに近くで見ていたのに、彼女の気まずそうな様子に気がつかなかったのだろうか?
「まあ、でも確かにお前が忘れられないのも分かる気がするよ。可愛いもんな、お前の”元”カノ。なんか、いい匂いしたし」
ニヤニヤしている竹中さんの顔にイラッとした。そんなに”元”を強調しなくてもいいだろ。
「匂い、嗅いだんですか?」
距離を詰めると、竹中さんは僅かに怯んだ。
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