アイツの本気と俺の本心

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 この間は椎名が一緒にいたせいで、くるみに言いたかったことが何ひとつ言えなかったが、アイツは俺とくるみが関係を持ったことも知っていたんだし、隠さずに自分の本心を伝えておけばよかったと今になって後悔している。  椎名がいたからこそ、俺の想いを伝えておけばよかった。  ”俺もくるみが好きだ。お前には渡したくない”と――。    翌日、定時を一時間ほど過ぎ、仕事がひと段落したところで電話が鳴った。  誰かと思えば、相手はくるみだった。 『あ、もしもし。急にごめんなさい。今、お電話大丈夫ですか?』  スマホの向こうの声は僅かに震えているようだった。 「大丈夫だけど、どうしたの?何かあったの?」  昨日の今日だけに、わざわざ電話をしてくるなんてよほどのことだろうと思った。
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