オレがついた最後の嘘

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「初めまして。椎名悠二です。よろしくお願いします!」  顔合わせの日、オレは珍しく手汗かくほど緊張してた。  毎日のようにテレビで見る人と仕事するなんて初めてやもんな。 「初めまして。カンナです。今回は急なことでごめんなさいね」  うわ~。テレビで見るより顔ちっちゃ。ほっそ。オーラ半端ない。  曲も本人もクールな感じやから、もっとツンケンした嫌な女かと思ってたけど、めっちゃいい人そうやん。  オレ以外のダンサーと通しで一曲踊ってみるから見ておいてって言われたけど、生で見たら迫力あるなぁ。カッケ―。  振りは頭に入ってるから、見ながら手だけ合わせてみた。  この中にオレが入るんかと思うとゾクゾクする。 「すごい。椎名さん、振り覚えてきてくれたんですか?」  鏡越しにオレが動いてるのが見えたらしい。 「一応、一通りは。あ、椎名さんじゃなくてユージでいいっすよ」  普段、椎名さんなんて呼ばれることないからな。氷川ちゃんぐらいやで、オレのこと苗字で呼ぶの。
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