俺と彼女の第二章

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 思えば、付き合っている時から面と向かって自分の気持ちを伝えたことなどほとんどなかった。  今の俺はかつてないほど素直に自分の気持ちが言えたような気がする。  恥ずかしいというよりは清々しい気分だった。  もちろん、言葉だけではダメなことは分っている。  口先だけの想いでは伝わらない。行動でも示していかなければ。 「今、返事はしてくれなくていい。ただ、俺がもう一度くるみとやり直したいと思ってることを伝えたかったんだ」  「うん。ありがとう……ございます」  俺がストレートに伝えたせいか、くるみは酷く戸惑っているようだった。 「じゃあ、話はこの辺にして。どうする?まだ早いし、デートでもする?」  世間話をするような空気でもないし、椎名の冗談を真似して言った。 「えっ……」  笑いもおきず、悪戯にくるみを困らせるだけだった。やはり、俺には冗談を言うセンスはないらしい。
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