俺と彼女の第二章

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「氷川さん、知ってます?今年の創立記念のパーティーにはカンナが来るらしいですよ」  三人で会ってから数日後、出張先のアメリカに向かう飛行機の中で、後輩が興奮気味に教えてくれた。 「へえ。カンナって有名なの?」 「え!?知らないんすか?最近、ドラマの主題歌が大ヒットした歌手で……」 「ああ、ごめん。俺あんまりテレビとか観ないし、流行りには疎いんだ」 「去年レコード大賞の新人賞もとったし、紅白にも出てたから新聞にも載ってたんですけどね」  後輩はその子のファンらしく、信じられないという顔をするのでスマホで検索してみたが、顔を見てもピンとこなかった。  巷で人気の歌手が来るなんて凄いことなのかもしれないが、正直何の興味もなかった。  パーティーの日はなるべく仕事を入れないようにと言われているが、取引先の都合によっては、そうも言っていられない。  期待したところで、仕事が入ってしまえば人気歌手のショーなど観ることはできないのだ。  もし、参加することができたとしても、俺は会場のどこかでくるみと落ち合えたらいいなということぐらいしか考えてはいなかった。
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