俺と彼女の第二章

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     *  パーティーの当日、会場となるホールに着くと既に人だかりができていて、それだけで気が滅入りそうだった。  招待客以外は入れないので、必ず受付を済ませなければいけない。  その為に、入口が混雑してしまうのだ。  帰ってやろうかと思いながら並んで入った先に、くるみが立っていた。 「あれ?くるみが受付してるの?」 「あ、うん。そうなの」  本社の人間に交ざって、くるみが受付をしていた。人手がないから駆り出されたのだろう。濃紺の上品なワンピースと、アップにした髪型がよく似合っていた。  こういう時、椎名なら周りに何十人いようと「可愛いやん」って言うんだろうが、さすがに俺はまだそこまでできそうにはない。 「そっか。じゃあ頑張って。また後で」  後ろも詰まっているいるので、素っ気なく声をかけると会場へ向かって歩き出した。 「稜!」  会社に俺のことを下の名前で呼ぶ人間などいないので、同じ名前の人がいるのかと思って振り返ったら、そこに見知った顔の女が立っていた。 
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