俺と彼女の第二章

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「氷川さん、ほらもうすぐ始まりますからね!一緒に前の方でカンナのすごさをちゃんと観て下さいよ!」 「いや、いいよ別に……」  知らないと言われたことがよほどショックだったのか、後輩は俺の手を引き、ステージの近くまで連れて行った。  俺みたいに名前も知らなかったような奴が前で観たりするのは失礼じゃないのか?  ショーが始まって、後輩が夢中になったらそれとなく後ろの方へ移動しようと企んでいた俺は、まだ知らなかった。  この後、後輩よりも俺の方が夢中でショーを観てしまうことを――。  和やかな空気の会場が暗転すると、アップテンポの曲が流れ始めた。あまりライブに行ったりしたことがないので、突然の大きな音に鼓膜が破れそうな感覚になる。 「うわ~きましたよ!」  真っ暗なステージの上でスタンバイしているのがシルエットで何となく分かる。  ん?カンナって子が一人で出て来るんじゃないのか。  思った途端に眩いばかりの照明がステージ上を照らした。そこには真っ白なスーツを着て、ハットを目深にかぶった男が5人ほど立っていて踊り始めた。  そこへ真っ赤なドレスを着た女性がやってきて、同じように踊り始めた。  カンナというアーティストは歌って踊る子らしい。
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