俺と彼女の第二章

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 素人目に見ても、5人いるダンサーの中で一番上手なんだろうということは分かる。アイツだからという訳ではなく、自然と目がいってしまう。  身のこなしが滑らかで華があると言えばいいのか。  普段の椎名からは到底想像もつかないような魅力的なダンスで、ターンした時の髪の毛の動きまで美しく思えた。  同性ながら、惚れ惚れするほど格好良いと思う。  この会場のどこかでくるみも椎名のステージを観ているのだろうが、今日の椎名を見たら心が動くかもしれないと危機感すら覚える。  すべての曲が終わり、最後にカンナがダンサーたちを紹介した。名前を呼ばれたダンサーはその場でダンスをするのだが、5番目に呼ばれた名前はやはり「ユージ」だった。奴の名前が呼ばれた瞬間、一際大きな歓声が上がった気がした。  気がつくと、俺も惜しみない拍手を送っていた。  圧巻のステージを見せつけられ、終了後も俺はしばらく茫然としてしまった。 「どうっすか?すごかったでしょ?カンナのステージ」  ニヤリと笑い、後輩がどうだと言わんばかりに言った。  「ああ、凄かったよ」   ボソッと呟いた俺の頭の中には椎名のことしかなかった。
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