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歓談の時間が始まると、ダンサーたちが会場に来るという話を聞きつけ、俺は会場の入口に向かって歩き出した。
この人混みでは、簡単に見つけることはできないだろうと覚悟していたが、意外にもすぐに見つけることができた。
入口から少し離れたところで、椎名とくるみが話しているのが見えた。
椎名が一番見せたいと思っているのはくるみなのだから当然か。
「あれ、氷川ちゃんも見てくれたん?」
くるみの後ろに立つと、椎名はすぐに俺にも声をかけた。
「ああ、見たよ。引くぐらい格好良かった」
お世辞抜きにそう思う。
「マジで?氷川ちゃんにそう言ってもらえたら嬉しいわぁ」
満面の笑みを浮かべる椎名はいつもの陽気な椎名だった。
本当にあのステージに立っていた男と同じ男なのだろうかと思ってしまう。
「さっきのダンサーさん、氷川君の知り合いだったのね。すごく素敵でしたよ。もう惚れ惚れしちゃいました」
椎名と話していると、どこからともなく彩子がやって来て興奮気味に言った。
「ああ、ありがとうございます」
二人がダンスについての話を始めると、くるみは複雑な表情を浮かべそっとその場から離れていった。
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