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嘘をつくのが下手な子だなと思った。今は春だから何もないが、これが真冬で頭に雪が積もっていても彼女は同じことを言うんだろうなと思った。
彼女の可愛い嘘に、殺伐として擦り切れそうな日常が洗い流されていくような気がした。
「何か食べたい物とか行きたい店とかある?」
「わたしは別に……氷川さんの行きたいところでいいです」
何の裏切りもない予想通りの答えだった。
もし、俺がホテルって言ったらどうするのだろうと意地悪な考えが脳裏を掠めたが、普通に和食のレストランへ行くことにした。
「ごめん。もっとオシャレなお店の方がよかったかな?」
店内にはカップルもおらず、ほとんどが家族連れか老夫婦といったところだった。
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