第一章 旅立ち

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第一章 旅立ち

【第1話:闇を纏いし二つの存在】 「え!?生贄って何!?ぇ!?」  目の前で起こっていることについていけずに、オレはパニックをおこしていた。  ≪光栄に思え。その身をわれの贄にしてやると言っているのだ≫  ≪ぬかせ!お主に贄など不要だ!そいつはわしが喰らってやる!≫  突然現れた得体の知れない二つの存在。  見えているのにしっかり認識できない。 「なんだ?なんなんだこれは!?」  闇を纏った二つの存在がゆっくりと、しかし確実に近づいてくる。  とにかく逃げようとさっきから体を動かそうとするが足が竦んで動かない。  いや、金縛りにあったようにまったく動かなくなっていた。 (やばいやばいやばい!なんだこれなんだこれ!)  これはダメな奴だ!と頭の中で大音量で警笛がなっている。  すると小さな影がその得体の知れない存在との間に割り込んでくる。 「ばうわう!ばうわう!」  愛犬のパズ(チワワ)だった。 「パズ!逃げろ!おまえだけでも!」  懇願するように言い聞かせるように何度も何度も叫ぶが、パズはその場所を譲ろうとしない。 「ばうわう!」  必死に吠えて守ってくれようとしていたパズだったが、一睨みされるとオレと同じく金縛りにあったようで動けなくなる。 「くぅ~ん」 (あぁぁ。パズまで!もう、もうダメなのか…)  二つの闇を纏った存在の間で何かが激しくぶつかりあいせめぎあう。  しかし、その存在はもう目の前にまで迫っていた。 (いったい何なんだ。なんでこんな事になったんだ…)
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