第二章 激動

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【第69話:予兆】 ≪我は『残照(ざんしょう)優斗(ユウト)』の名において力を行使する≫ ≪安寧(あんねい)の境界≫  光の文様が現れ回転して光の障壁を作り出した瞬間だった。  ガキン!!  光の障壁に巨大な何かがぶつかり砕け散る。 「うわっ!?あっぶねぇなー!!」  オレは2mはあろうかという氷柱をギリギリの所で何とか防ぐが、回り込んでくる小さな影に少し反応が遅れてしまう。 「ばぅぅん!!」  飛び出してきた小さな影がオレの後頭部にかじりつく。  かぷぅっ! 「めちゃ痛いんやけどぉ!?」  そう。パズは本気で心配してくれていたようで、無事だった連絡を入れるのを遅れた事に物凄くご立腹だった。 「ユ、ユウト殿…。頭から血が…」  パズは頭に噛みつくのに成功すると、作戦成功したと勝ち誇った気持ちを送ってくる。 「ほんとにごめんって!後で干し肉あげるから許して!」  となだめてみるが後頭部にぶら下がるパズはまだまだ放してくれなさそうだった。  ~  オレ達は闇の眷属がエルフの里に送り込もうとしていた軍勢を殲滅する事と『世界の理を壊す者』を捕らえる事に成功したが、変異種を葬った際にあふれ出た負の力は特殊な呪具で吸収されて逃げられてしまった。 (いや…逃がしてもらったと言った方が良いのかもしれないな…)  オレ達はあの時点でゼクスと名乗る闇の眷属と真正面からぶつかっていれば、恐らく良くて引き分けだっただろう。  『第三の目』を使って読み取った力は計り知れないものがあった。  そもそも歴史に何度か登場しているような魔人なのだ。
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