番外~おお、誇り気高き草原の民よ~(後編)

20/25
137人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「陛下、何をお決めになられたので?」 「うむ、余はラティーファを連れて行く」 言い切ったイブラヒムにターミルもナーセルも目を見開き、声が聞こえたラティーファは後ろを振り向いた。 「陛下、またご冗談を。先ほど逢ったばかりの娘で御座いますが」 「いや、冗談ではない」 二人のやり取りを見つめたナーセルはラティーファに言った。 「お前はどうだ」 「こっちこそ冗談じゃないわ」 何枚も薄焼きのパンを重ねた皿をラティーファは真ん中に置く。その隅には貰ったばかりの薔薇のジャムが添えられていた。 はっきりと答えたラティーファの様子にナーセルはこれではダメだとばかりに両手を広げて見せている。 「陛下、婚姻を結べば解消はできませぬ。物事は冷静に考えて戴かねば一時の気の昂りのまま…」 「うるさいターミル」 イブラヒムはターミルの小言をピシャリとはね除けた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!