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「腹、減ったな」
何気ない日常の、
それは、合図。
朔 ( さく ) は、蛇口を捻り、水を止めた。着ているエプロンの前で簡単に手の水気を拭きながら、洗い終わっていない食器を尻目に、リビングのソファでスウェット姿で寛ぐ明 ( あきら ) の方へ向かう。
その姿を満足そうに見ながら、明の切れ長な瞳が弧を描いた。
「ん」
つまらないバラエティー番組が流れるテレビを遮るように、朔は明の前に立った。冷水で冷えた朔の手を、明が掴む。
「冷てぇな。お湯にすればいいのに」
「手が荒れるから…」
「クリームでも塗ればいいだろ」
熱い指先が、労るように朔の指先を一本一本撫でていく。そして、全て撫で終えると今度は明の舌が指の股から先まで、ねっとりと舐め上げた。
「っ、ン」
こうやって明の口に入るから、クリームは塗りたくないのだという意見を、朔は上がりそうになる甘い声と共に飲み込んだ。
キャンディのように舐められながら、腰を引き寄せられる。
明の太股の上に乗り上げ、体が密着した。服の上からでも分かる。同じ遺伝子、同じ骨格のはずなのに、少しの生活習慣の違いで、肉の付き方が違う。自分よりも筋肉質なその体に、朔は鼓動を高鳴らせた。
手が唾液で十分に濡れるとようやく満足したのか明の口が離れ、その真っ赤な舌は、朔の首筋に移動した。
ゾワッと鳥肌が立つ。
「ぁ、や…っ」
長年をかけて性感帯に仕上がったソコは、ただ舐められているだけだというのに、確実に朔の体温を上げていく。冷えていた指先が、すぐに熱くなった。
「くく…、弱ぇなぁ」
「っふ、ン」
楽しそうに喉を鳴らしながら、まるで注射をする前の消毒のように、同じ場所を丁寧に、丁寧に舐め上げられる。その間に、次の衝撃を期待して神経が鋭敏になり、朔の中心がジーパンの中でパンパンに膨れ上がった。
明も朔の熱を、密着した腹から感じたのか再び楽しそうに喉を鳴らした。そして、一瞬、舌が離れたかと思うと、鋭い痛みと共に全身に強烈な痺れが走った。
「っぃあ、アァアーーっ!!」
ビクビクと痙攣し、朔は下着の中に射精した。
「ふっ…おまへは、すぐイッちゃうな」
首元で明が言う。その唇の隙間から、ツゥ … と一筋の液体が流れる。
鮮やかな赤。
――― 朔の血だった。
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