Prussian blue

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 朔と明は一卵性の双子だ。朔が兄で、明が弟だった。そして、普通の人間ではない。 【吸血鬼】と、人間からは呼ばれている。 しかし、人間の文明が発達し、他の動植物や化け物らが生きにくくなったのと同様に、吸血鬼も以前のような生き方が難しくなった。 陶汰されずに生きていくために、徐々にその有り様は変わっていった。  吸血鬼の中で双子が多くなり、片方は吸血を行う従来の吸血鬼、片方は吸血をしなくてもいい吸血鬼が産まれるようになった。  どうしてそのようなことが起きたのかは、定かではない。だが、恐らく、母親の胎内にいる際、吸血欲求の強い方が、片割れのその力を吸ってしまうのだと考えられた。  吸血をしなくても生きられる方は、人間と同じ食べ物で生きられ、高い治癒力や長寿に関して、吸血を行う方と変わりがない。  それらの条件から、吸血鬼の双子は、自給自足ーー平たく言えば、共食いをすることが当たり前となった。 『吸血を必要とする者』が、『吸血を必要としない者』の血を食べる。 朔と明で言えば、吸血を必要とする『明』が、吸血を必要としない『朔』を食べる。 二人が産まれた時には、もう、その関係は決まっていたのだ。それは、互いが死ぬまでずっと続く。 さらに、吸血鬼の欲する血の条件は、『他者との契りを行わない者の血』であった。つまり、他者の体液、遺伝子が混じってはいけない。混ざると、何とも言えぬ、腐敗した味になるというのだ。  そのため、補食される者は、同じ遺伝子を持つ捕食者のみとしか交われない。 必然と、捕食される者は、捕食する者の所有物のようなヒエラルキーが生まれていた。 それは、吸血鬼の間では、徐々に常識となっていった。 そうして、朔は産まれ堕ちたその日から明に食べられ、20歳になった今も補食され続けているのだ。
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