再開

7/12
152人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
俺が昔、金がある時だけ、ここでよく飲んでいた、ウィリアム・ホワイトリー社の上流ブランディッド・スコッチだ。 「私のおごりです。再会を祝って」 「よく覚えていたな」 「客の好みは全部覚えています」 「相変わらずだな」 マスターは糊の効いたシャツにチョッキ姿というバーテンの正装をしていたが、こっちも昔のままで相変わらずだ。 「探偵の仕事は一旦引退したんだな、また昔の因縁でいろいろ動かなくちゃならなくなった。こっちもまた相も変わらずのドブネズミ稼業に逆戻りだよ」 「でも私はもうSではありません。ご協力できる事は申し訳ないですが、何も」 「わかってる。何年も経ってるんだ。今更Sとして動いてくれなんて言わないよ。それにSだったのは、俺がまだデカの頃の話だ。こんな元探偵の情報屋だったわけじゃないよ。まあとは言え、ずいぶん協力してもらって、探偵時代にも世話にはなったけどな、感謝してるよ」 「こちらこそお世話になりました」 「だから今日は、ただ昔話をしに来ただけだよ。昔々俺が、デカとしてセイアンで動き回っていた頃のお話をな。確かあの頃、協力者になってもらったんだよな。その頃の話をしたくてきたんだよ」 「懐かしいですな。ちょうど私の出直しを手伝ってもらった頃だ」 「そうだったかな」     
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!