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「昔の因縁と言われましたがそれがらみですよね?話っていうのは」
「まあそんなとこだ。今更ほじくり返したくもないことを、俺が直接ほじくり返すことになった。てめえのトラウマに自ら土足で踏み込む羽目になった。まあそれも運命ってものかもしれんが」
「あなた昔から臭い物に蓋のできる人じゃなかったじゃないですか」
「そうかもな。だが俺は長い間蓋をして生きてきたんだよ。結局1日たりとも忘れた事はなかったが」
「そうですか」
俺はバーテンに過去の事件の話をし、それと今回の失踪人の捜索の話を一通り話した。
バーテンは俺の目を見てから、しばらく目を閉じていたが、「少々お待ちを」と告げると、カウンターの奥の扉を開けて、事務室らしき部屋に入っていった。
店内には俺一人になった。
もう開店時間を過ぎているが、客が入ってくる気配もない。
私の出直しを手伝ってもらった頃、か。
バーテンは昔、ある組にいたが、その頃足を洗った。
単にムショから出てきたら、元いた組が解散していて、路頭に迷っただけだが、組のために昔ながらの鉄砲玉をやって食らい込んでいたような奴の受け皿がなくなったんだ、路頭に迷うのも当たり前だ。
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