仕事

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俺は気にも留めていなかったネクタイピンをよく見た。 それは、マイクと発信機、GPSが取り付けてあるネクタイピン型の発信機だった。 マイクと発信機。 そいつは昔、俺がバーテンを更生させるために、奴の店に昔の仲間がやってきて妨害したり、悪い道に誘いをかけたりするのを監察するために、俺がバーテンの店に設置しておいたものだ。 確かバーテンにはただのネクタイピンだと言って、ネクタイピン型の発信機を渡したこともあった。 それでわかった。 よく見ると、俺が昔渡した奴にかなり似ていたから。 バーデンはあの時、あれが発信機だと気がついていたのか? そして今度は、そいつを、来店記念だの言いながら、俺を守るために、送り返してきたのか…。 あの野郎… 広岡とデコトラ数台は、早々と待機していたのか、ベンツ数台の後にしばらくしてデカイ車体を揺らして突入してきた。 そして、そのバカデカイ車体をベンツの前に回り込ませて、ベンツの進路をきっちり妨害してくれた。 巨大なデコトラ数台に前にこられて、ベンツには俺の車が見えない状態となり、俺はその間に、さらにスピード上げて逃げ切った。 天堂の家までは、まだ距離があるが、何とかなりそうだ。 ベンツの追跡は、途端にバックミラーにも映らなくなり、このまま逃げ切れそうだった。 1時間ほどクライスラーを飛ばして、俺はなんとか天堂の屋敷に到着した。     
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