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10年前に張り込んでいた場所に車を停めた。
建物は古くなっているが、何も変わっていない。
俺も理沙も。
理沙を車から降ろすと、彼女は家に戻ることをためらっているように見えた。
結局、麗子らに連れられて、黒幕の巽組に誘拐された理沙。
10年前、天堂の屋敷にカチコミ、10歳の理沙を人質に取った鉄砲玉は、巽組の組員だった。
鉄砲玉が死んで、事件は一応解決を見たが、しかし、天堂組と巽組の抗争は、そこから10年、まだ続いていた。
天堂が巽組に要求されていたのも、理沙の身代金ではなく、天堂の引退、天堂組の解散といったところじゃないのか。
刑事の伊吹が、まだあの事件は未解決だと言っていたのはそういう意味だろう。
俺と理沙にとっても、あの事件は未解決なままだったが…。
理沙に対して、罪悪感はある。
だが俺は、敢えてキツく理沙に言った。
「いいか、きっちり決着つけて来い」
「今更なんだよ」
「今更じゃねえだろ。お前はずっとそこから止まってしまっているんだ。本当は自分でもわかってるはずだ。人間立ち止まったところからやり直しゃいいんだよ。何回だってな。そこからが全ての始まりだ」
「……」
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