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ああそうだ、今日は婆さんちの草むしりの日だった。
電話に出るとやっぱり婆さんだ。
「ごめん、ごめん。色々と野暮用で立て込んでてさ、これからすぐ行くから」
「もうこれからじゃあ、夜になっちまうから、草なんか見えないだろう。全くどこをほっつき歩いてるんだい。電話しても全然出ないし」
「わりい、わりい。これでもあんまり暇じゃないんでね。真夜中だろうと、草むしりはやってやるから安心してくれよ」
「あんたはいつまで経ってもガキなんだから。何でそうブラブラしてられるのかね」
「まだまだ若いんだよ、もういいおっさんだけどな。ハハハ」
「全くいつまで経ってもガキみたいに死ぬことをちっとも怖がっちゃいない。無鉄砲にもほどがあるってのはあんたのことだよ。どうせ骨でも折って、体中傷だらけなんだろうが。私はこれでも昔は看護婦をしてたんでね、あんたがここに来るまでに傷の手当ての用意をしといてやるよ。それから腹も減ってるだろう、あんたの好きな鮭のおにぎりたらふく作ったから好きなだけ食べたらいいよ。全く心配ばっかりかけるんじゃないよ。じゃあね」
電話は切れた。
婆さんは言いたいことだけ言って切りやがった。
ったく…あの婆さんには全くかなわないな。
体中傷だらけで骨を折ってる、だと…?
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