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雷電本人が、そんな風に考え、口にすると、決まって小言を言われる。
曰く、後ろ向きな発言が癖になるのは良いことではない。
曰く、『能力』はそれを扱う肉体があってこそであって、お前の肉体がなければ『能力』も意味を為さないという事を分かっていない。
それは大抵、育ての親代わりをやっているジルの言葉だが……少し、煩わしい。
しかし、それは概ね正しいことである、と自分も受けとめているため、首肯を示して、心にも留めるのが当然だ。
「しかし、自分が抜けている間、攻撃が無いとは限りません」
……生みの親は、一体どんなことを教えてくれたのだろう。
ここ最近は、『能力』に頼れば頼るほど、何故だか、そんなことを考えてしまう。
それを誰かに問えば、『能力』によって脳が活性化されているのではないか、と返ってくる。自分も分からない自分のことを、分かるはずのない他人に問うているのだから、その答えに妥当性は無い。それでも、例え曖昧な答えであったとしても、そうかもしれない、と受け止めておくのは、決して悪いことではない。そういうものだろう。
「なに、お前ひとりが居ないくらい、いざという事にはなるまい。気楽にやってこい」
「……はい」
だが、自分がそれを気にする必要はない。何故なら仕事の完遂以外に、自分が考えるべきことなどないのだから。
……過去だって、目の前の任務を遂行するためには、必要ない。だから、思い出せなくたって、思い出せないのなら、それで結構なことだ。
そういうものではないのか。
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