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(……慣れないことをした……ん?)
アリサ=ワードリア……雷電は、授業が始まって静かになったことを、ありがたく感じた。これは、思っていたよりも面倒な仕事かもしれない、と心構えを新たにする。
ふと、気づかない間に、画用紙を折りたたんだようなものが、席の机に置かれていたことに気が付いた。それは、ひとりでには開かないように折りたたまれており、表面には何も書いていない。開いてみても、何も書いていない。
匂いを嗅いでみると、ある液体に特有のにおいが僅かに香った。違いない、古典的な炙り出しだ。これなら、と『能力』を使って、指先の温度を上昇させた。
『ほうかごここのおくじょう』
面倒なことならば避けたい、という気持ちが最初に来た。しかし、この文書の送り主がこの文書の示した屋上で待ちぼうけを喰らえば、それは悪評として少なくともこのクラス内には広がるだろう。
(……仕方ない)
渋々であるが、この文書に従う事にした。リスク管理を考えれば、面倒であっても仕方がないと結論付けた。
「ええ、じゃあワードリアくん、さっそくだけど、ここ解けるかな」
「……ハイ」
雷電は、席を立つ前に、折り目だらけの紙を破り、ポケットにしまい込んだ。
アリサ=ワードリアとしての、異質な日常が始まっていた。
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