Misadventure

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 雷電は、これまでの時間で多少の質問を受けていたが、返答のどれもが、そう面白くはない内容ばかりで、彼自身が仲よくしようと努めるようなこともしなかった。  おかげで、四つの時限を過ごし、昼食の為に長く時間の取られた休憩時間が訪れるころには、人垣も消え、遠巻きに眺められる程度に収まっていた。  落ち着いて昼食を取れる、そう思って新品同然のスクールバッグから、道すがらで適当に買っておいたサンドイッチを取り出す。 「よう」  そんな折であったからだろうか、弁当箱片手の少年の言葉に、雷電は応えることが出来なかった。否、正確に言えば、応える言葉を持ち合わせていなかったからだ。  お前は誰だ? 名前も知らないのに馴れ馴れしいやつだな? できれば、そっちの後ろのほうで興味ありげな連中と仲良くしていてくれないか?  これらは不適だろう。世間慣れしているとは言えない雷電にでも、そんなことくらいは分かる。ならば、なぜ声をかけてきたのか、それが肝要となる。 「はは、賢そうなのに……いや、だからか? 人付き合いに慣れてなさそうだ」  嫌味な奴だ、という含みを隠そうともしない少年は、レオ=クライスンと名乗った。顔つき、体つき、服装、にじみ出る自信、取り巻きの数……ひっくるめて判断すれば、このクラスで最も顔が広いのは彼だろう。  ならば、と、こちらからも名乗り、握手を固く交わす。 「けっこう握力ある方か?」 「いや、どうだったか……あまり興味のないもので」 「そうか、変わってるな」 「時々言われます」 「だろうな」  雷電の前の座席に座っていた生徒は、昼食の為に席をはずしていたために、そこにはレオが座った。背もたれであるべき部分に、両腕と体重を預ける格好だ。 「ところで、なんだが」  レオは学ランの袖をまくり上げると、左肘の下部分に巻き付けられた腕時計のようなものを見せつけるようにして、言った。 「お前、超能力者(キャスター)だろ? ヒューズと握手した時、なんか言ってたもんな」
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