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今日は特別な日だ。
僕がこの世に、生まれ落ちた日だから。
今日は特別な日だ。
それから6回目のその日に、僕は君に出逢ったから。
今日は特別な日だ。
生まれてから10回目のその日が、ひいおじいちゃんの100歳の誕生日だったから。
その日、ひいおじいちゃんの家に家族皆が集まっていて、そしてひいおじいちゃんは僕に、誕生日プレゼントとして色鉛筆をくれた。
僕も何かプレゼントを返せないか考えたけれど、ひいおじいちゃんは僕に、「お前が生まれて来てくれた事が、一番のプレゼントだ」と言って、そっと微笑んだ。
その日の夜、ひいおじいちゃんとおばあちゃんは、皆より先に寝室に向かった。
今日のこの日が、「生まれて来て一番幸せな日だった」と、ひいおばあちゃんと共に笑顔を見せて。
そしてこの日、家の柱時計は、夜の12時の鐘を鳴らさなかった。
翌日の朝、ひいおじいちゃんとおばあちゃんは、息を引き取っていた。
とても穏やかで、幸せそうな寝顔だった。
柱時計は、夜の11時59分59秒で止まっていた。
今日は特別な日だ。
それから6年後の誕生日、僕は君に告白した。
君も僕を好きだと言ってくれて、僕たちは付き合う事になった。
今日は特別な日だ。
生まれてから29回目のその日に、僕は君と結婚した。
一生君を大切にすると、心に誓った。
今日は特別な日だ。
翌年のその日、僕と君との間に子供が生まれた。
僕と、ひいおじいちゃんと、同じ誕生日の子供だった。
ひいおじいちゃんの言った、「お前が生まれて来てくれた事が、一番のプレゼントだ」という言葉の意味を、僕は初めて理解した。
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