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15:シロかクロか
夕方のニュースで、血液検査結果の書かれた封書が霞ヶ関から一斉発送されたと報じられると、一ノ瀬の大人たちは皆手に汗を握った。
政府が本格的に動き出している証拠だ。『要再検査』の文字が書かれたピンク色の紙が封入されている場合、血液検査を受けた指定病院か保健所を再訪問する必要があるという。
恐らく政府はその対象となるナノマシンについて詳しい情報を持っている。ナノの引き起こす症状を緩和するか未然防止するための薬を投与するのではないかと、これはあくまで勇造らの素人考えだが、どうにかして治療していくことにはなるのだろう。
政府も警察も、調べているらしい戦闘用ナノについて一切コメントがない。柳澤所長の言うように、九割以上の確率で医療用ナノでないとしたら、確かにとんでもない事態に発展する。未曾有の大混乱が巻き起こるのは目に見えていた。
湊斗の所にも届くはずの封書、必ず結果は会社に教えるようにと念を押し、彼を家に帰した。別れ際、帰りたくないと数回呟くのを、沙絵子が無理に諭していた。
「親が元気でいる間しか、子供は甘えられないんだから」
沙絵子の言葉に、湊斗は今にも泣き出しそうだった。
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