08:隠さなければならない

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08:隠さなければならない

 テレビや新聞、ネットで様々な憶測が流れる中、全国一斉血液検査は粛々と行われていた。拒否例もあり、必ずしも全ての高校生から採取することは出来なかったようだが、それでも大多数は何の疑いもなく感染症対策の血液検査に同意した。湊斗(ミナト)のように学校に通っていない少年らの元には直接検査依頼が来て、個別に検査を行うことになっていたが、彼ら全てを検査するというのは往々にして難しく、実際検査を受けたのは彼らの三割にも満たなかったのである。  大学病院の一斉血液検査専用受付所では、様々な風体の未成年らがその順番をざわめきながら待っていた。両親や上司らしい付き添いの大人たちが、何人かいる。勇造も湊斗の付き添いとして、病院に来ていた。  普段病院に用事のないような、あまり清潔感のない連中もチラホラ。静かにするような素振りも見せず、ガヤガヤと不快な話し声を響かせ、用意されたパイプ椅子に大人しく座るでも無し、纏まりよく待つでも無し、好き勝手にうろつき回る様は、とても病院の中とは思えぬ散々な状態だった。     
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