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「何それ、くだらねぇ」
湊斗が鼻で笑う。
「うん、そうだな。くだらねぇ」
唇の端を上げて、勇造は静かに息を吐いた。
「でも、そういうくだらねぇことが、案外大事だったりするもんさ」
病院に入ってから、三十分以上待たされていた。次第に飽き、プラプラするのも飲み物を飲むのにも疲れてしまった。たまに交わす会話も長くはもたない。呼ばれるのはいつなんだろうか。しわくちゃになった番号札を広げて、湊斗はぼうっと病院の出入り口を見ていた。
様々な人間が出入りする。
病気の人、けが人。付き添い、看護師、医者、そして、警察――。
「沢口さん」
湊斗が言うより先に、勇造が反応してシャキッと立ち上がった。
沢口は勇造の声に気づき、一瞬顔を顰めた。
病院奥から入り口方向に歩いてきた刑事らに、勇造は勇み足で近寄り、なにやら話し出している。湊斗も慌てて後を追い、通路を塞いで会話する勇造と沢口の元へ駆け寄った。
「事件でもないのに、こんな所に警察が来るのは不自然ですよ」
背の低い勇造は上目遣いに言う。足止めされた沢口ら刑事は、困ったように勇造を見下ろしていた。
「そんなこと、お前に言われる筋合いはねぇよ。――と、何だ。お前も血液検査の付き添いか」
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