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湊斗に気づいて丁度いいと話をそらす沢口に、勇造はますます食ってかかった。
「やっぱり、血液検査と事件、何か関係があるんですね」
「いい加減にしろ、一ノ瀬」
沢口の分厚い手のひらが、勇造の頬を引っぱたいた。大きく弾けるような音に、周囲は一瞬シンとして注目を集めた。
いきり立つ勇造のつなぎ服を、沢口はむんずと捕まえて、近くにあったトイレの中へと引きずり込んでいく。
待ってと手を伸ばす湊斗を、沢口の部下らが静かに止めた。
「血気盛んなのはいいが、見境ないのは困るなぁ、一ノ瀬よぅ」
ドスのきいた、まるで犯人を追い詰めるような沢口の低い声が、トイレの中で響いた。胸元を鷲づかみにされ、ぐいと眼前に迫られた勇造の背中に、ビリと電気が走る。
「そう言うけど、沢口さん。新聞、ニュースでは大騒ぎですよ。何でわざわざ十代の少年たちに血液検査させるのかって。俺も色々考えてみたけど、おかしすぎる。第一、沢口さんたちがここにいるのだって不自然だ。血液検査してる医療機関にその検査が順調に行われているか視察に来るのは普通、厚労省の職員でしょ。なんで警察が出入りしてるんです。明らかに、何らかの事件性が疑われてるってことじゃないんですか」
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