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「まぁ、端的に言えばそんな感じです」
勇造の出方を見て何を話すか決めているのだろう、柳澤は腕組みして何度も頷いていた。
「正直、私たちにはそういう科学的な知識がなくて、『ナノが原因だったら何となく辻褄が合うような気がする』程度までしか考えが及ばんのです。考えあぐねているところにここを紹介」
「――経済日報ですね」
言葉が出尽くさぬうちに、柳澤が台詞を被せた。
新聞社の名前にハッとして勇造は息を飲む。
「知ってたのですか」
「あそこの記者が毎日うるさくてね。ここの研究所は取材お断りなんですよと何度言ったって聞いてくれない。なるほど、それであなたたちを寄越したのか」
柳澤は窓をそっと見る素振りをし、目を細めた。
「寄越されたとは思ってませんよ」
じっと我慢していた水田が、勇造の隣から横槍を入れる。
「確かにあの記者は社長に近づき、暗にここを教えてくれたが、ここに来たのは我々の意志ですから。そこは勘違いしないでいただきたい」
「大丈夫、気にはしませんよ。正直、動機などどうでもいい。我々もフットワークの軽い便利屋さんに少しお願いしたいことがあるもんですからね。丁度よかったんですよ」
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