11:二つのナノ

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こしずつだが医療現場は正常に機能していくはず、だった」 「はず、ですか」と、勇造。  柳澤は頷き、「そう、はず、だったんですよ」と答える。 「ナノの投与はカプセルか注射か、どちらかと決まってる。極小さな物質なのでね。それしか方法がないといってもいい。――これが簡単に投与できてしまうと言うことで、逆に何件かの医療事故が起きた。誤って別の患者にだとか、量を間違えたとか、どの時代でもある人為的ミスだ。切開術を必要とする大病のみに使用が許可されていたナノが、もう少しで簡単な手術の代行手段として利用できそうだと世の中が動いていた矢先のことですよ。ミスが続き規制がかかり、結局は総合病院や大学病院でしか投与できなくなってしまった。聞いたこと、あるでしょう。そして、このナノマシンという物体は、時が経つにつれ別のリスクを発生させていった。なんだかわかりますか」 「残留、ですか」と、水田。     
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