11:二つのナノ

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 柳澤は身体をグンと前に寄越して、二人の会話に割って入ってきた。 「そう、ですが」 「……なるほど。やはり警察は、ある程度特定してるのか。だからそんなことを」  急に頬を緩めた柳澤。  水田は不思議そうに彼を見つめ、「何か、辻褄が合ったんですね」と探りを入れた。 「私の中では色々と繋がりましたよ」  意味深な柳澤の、含み笑いし歪めた顔に、勇造と水田の胸は否応なしに高鳴っていく。 「うちにもその刑事さんがいらした。彼はその時、迷うことなく『戦闘用ナノ』について私に訊いてきたんですよ。よくもまあ、この小さな研究所の存在を調べやってきたもんだと感心したのを覚えてます。その後あの新聞記者が訪ねてきたときは、流石にあんな話題、世に出しちゃまずいと思いましてね。口を噤んだんです。そしたら今度は記者の差し金であなたたちがやってきた。もう、政府も隠してはおけなくなるでしょうね。ニュースになるのは時間の問題、なのかも知れない」 「その、何ですか。『戦闘用』ってのは」  聞き慣れない言葉に、勇造は反応した。物騒だと、水田と顔を見合わせた。     
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