12:嫌な予感

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12:嫌な予感

 便利屋に来て初めて、湊斗(ミナト)は長い休みをもらった。三連休。簡単な仕事しか入ってないから休んでいいわよと沙絵子がにっこり笑っていた。  久しぶりに自宅に長くいなければならない。それが苦痛で、正直湊斗は喜べなかった。  やることもない。考えた末、あの日久しぶりに会った義行(よしゆき)と連絡を取った。喜んで暇つぶしに付き合うよと言ってくれた義行の、昔と変わらない優しさが痛い。だが、当てもなくふらふら歩き回るよりずっと時間の経過が早いはずだと、連休の日中を夏休み中の彼と過ごすことにした。  母親は相変わらず男の相手をしているらしく、夜中にはいつもの如く声が聞こえてくるし、日中も何人かの足音と最中の声が絶えず聞こえていた。息子が働きに行っても、彼女の生活は変わらない。パブは辞めたのだろうか。最近は買い物以外に外出する気配もない。それまでずっと律儀に作っていた食事も、一体どうしたのか作る様子もなく、出来合いのものばかり食っているようだ。自分の金で食事をまかなえるようになった湊斗は、彼女と同じ屋根の下にいても、顔を合わせることがなくなっていた。     
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