12:嫌な予感

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 小さく脆い、今までずっと大切にしてきたものの一つに大きくひびが入った。  頭が真っ白になり、義行の台詞、後半に行くにつれて殆ど耳に入らなくなる。  鼓動が激しくなっていた。  手のひらと足の裏が、暑くもないのにぐっちょり濡れて、喉が急激に渇いた。  知らないうちに奥歯がカタカタと音を立てている。 「おい、湊斗。どうした」  慌てて義行が身体を揺さぶるも、彼は視点定まらぬままふらりと立ち上がり、 「帰るわ」  一言だけ呟く。  血が湧き上がっていた。  殺傷現場や惨殺現場を見たあの時よりも、激しく興奮してきていた。  * 「――その、『戦闘用ナノ』のことを警察が調べているということは、単純に流行しているナノがそれである確率が高いと、思っていいわけですね」  やっと柳澤が口にした、一連の事件の核心かも知れない言葉を逃してなるものかと、勇造は話を繋いだ。 「断定はかなり危険だ。だが、私の予想では九割以上の確率で『戦闘用ナノ』ではないかと。軍事関係のプロですら触ろうとしない、暗黙の了解のようなものなのでね。一介の刑事が調べて回るにはあまりに不自然だったんですよ」     
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