13:壊れていく

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 その横で水田は、あきれたように頭を抱える。 「ま、社長はお前なんだから、文句は言いたくないが」  困ったヤツだと言わんばかりに水田は立ち上がり、 「トラブル自分で持ってくるのはやめてくれよ。責任もって解決できるようじゃないと、後々苦労するぜ」  そのまま「帰る」と手を振った。  アルミの引き戸が閉てられ、水田がいなくなった室内は急にシンと静まった。  窓の隙間、すぐそばで鳴き続けるコオロギの、哀愁漂う声だけがいつまでも響いていた。
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