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白衣姿の家主の不気味さに肩をすくませ、そしてまた小動物の鳴き声と気配に背筋を凍らせる。昨日の勇造らと同じ反応だ。
「ね、ここ、何の研究してるんだっけ」
湊斗が堪らず聞いてくるが、答えようがない。『恐らくナノマシンの研究をしている』くらいしかわからないのだ。
昨日とは別の、診察室のような場所に通される。普通の病院のそれと変わりない造りに何となくだがホッとした。
「彼に何か説明しましたか」
柳澤はそっと入り口の二人に目をやる。事務机に向かった彼の手元には注射針。看護師らしいナース服の女性が一人、付き添いで立っている。
「いや、何も。――湊斗、そこ、座れ」
患者用の椅子に座るよう合図されると、湊斗は戸惑って目をパチクリさせた。
「何、注射? ねぇ、何すんだよ、社長」
「いいから座れ」
力仕事で鍛えた腕で、無理矢理椅子の上に縛り付けられた。自分で座れるよと勇造の腕をふりほどき、
「何するか教えてくれないと、訴えるよ」
などと、その訴える先も知らぬくせに大口を叩く。
勇造は努めて冷静に、出来るだけ本来の目的を知られぬよう、言葉を選んだ。
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