14:何も言えない

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「今、世間で話題になってる血液検査。お前も受けただろ。あの検査、もしかしたらナノ感染の検査かも知れないって、お前の友達が言ってたことは覚えてるな。今後ウチで働くとして、そのナノに感染してるかどうかいち早く知るために、知り合いに改めて検査をお願いしてるんだ。ここ、柳澤生体研究所の所長さんにな。検査は病院の時と一緒。ただ血を抜くだけだ。簡単だろ。シロならそのまま働いてもらうが、もしクロだったらきちんと治療を受けた上で働いてもらわにゃならん。近頃色々法律がうるさいからな。未成年雇うリスク回避のためだ。――わかったら、腕、出せ」  渋々腕をまくる湊斗。  軽く消毒した後で柳澤の握る注射の針が、少しずつ湊斗の左腕に刺さった。赤黒い液体が徐々に半透明の管に貯まっていく。  勇造は複雑な心境でその様子を眺めていた。  *  検査結果は数日中に出しますよと、柳澤は言った。 「次、伺うときには分析結果と一緒に、もっとツッこんだ話を聞かせていただきますよ」  柳澤の耳元でそう言うのが、勇造の精一杯だった。 「ねぇ社長。その、ナノ感染って、実際してたらどのくらい命に別状あるわけ」  軽ワゴンの助手席で注射の痕を軽く押さえながら尋ねる湊斗に、勇造は答える術を持たなかった。 「最近、社長、変だよ。なにかあったの」  その質問にすら答えることが出来ない。  無言で進むワゴン。東京の街が、全てを見守るように足元に広がっていた。
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