【掌編】30分、夜明けの君

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【掌編】30分、夜明けの君

 何故そうなったかは分からなけれど、僕はそれを受け入れた。  それは、僕だけのものだ。そう決めたのだ。  朝、まだ家族が誰も起きていない時間に目を覚ます。鳴り響いた目覚ましの音で一瞬にして覚醒した僕の頭は、条件反射的に目覚ましのヘッドを掌で叩く。電子音が鳴り止んだ。まだ頭はぼんやりしているけれど、体だけはしっかりと動く。覚醒したと思った僕の頭はすぐにぼんやりとして、睡魔に負けそうになる。  辛うじて踏ん張った僕は、寝間着がわりのジャージを脱ぎ捨てて服を着替える。まだ陽も昇っていない、しかし東の空が少しだけ明るくなったこの時間帯に、僕は毎朝一人目を覚まし、家を出る。  そっと階段を降り、玄関の鍵を開け、静かにドアを開ける。春が過ぎ、夏も本格的に始まろうとする湿り気の増した空気が、僕の肺を満たす。充足感を覚え、僕は一度だけ深呼吸をした。  自転車の鍵を外し、ペダルを漕ぐ。ようやく空が白み始め、家や道の輪郭もはっきりと区別出来るまでになってきた。     
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